奈良医院だより №464

       

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奈 良 医 院

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令和7年8月1日      
(2025年)          

熊対策のすすめ

   奈 良 正 人

 連日熊出没報告があり、昨年よりその回数も被害も多くなっております。農作業や散歩等屋外活動が安全に行える保証も無く、室内でも暑いからといって窓を開けたまま寝ていると、熊が入ってこないとも言えない状況が続いております。熊に襲われたニュースが報道された時、命には別条がないなどと言われると軽くて良かったと思いがちですが、熊外傷については考えを新たにするべきとの研究発表がなされております。全国で最もクマ外傷が多い秋田県の経験豊富な専門家たちが、その知見を結集し、一冊の本を発行しました。医師などの専門家向けですが、秋田大学大学院研究科救急・集中治療医学講座教授中永士師明先生の著書。私も先生のクマ外傷の医学講演を聞いておりますが、想像を絶するひどい被害状況の写真データーを沢山見せていただきました。クマ襲撃による被害の特殊性と深刻さを指摘されており、とにかく「頭部を守ってほしい」と警鐘をならしておりました。クマに襲われ「命に別条はない」とされた80代男性の症例写真を見て、あまりのすさまじさに言葉を失いました。額から上あごにかけて顔がなくなっているように見え、左目もえぐられ飛び出している状況で、鼻も取れていたとの事。治療にあたった秋田大学医学部附属病院高度救命救急センターのドクターは「クマは明らかに顔を狙って攻撃していると感じます」「鼻が取れ、皮膚が左右に裂けていました。救急隊員が道端に落ちていた鼻を見つけて運んできてくれたので、形成外科の先生が手術して、くっつけたとの事。血圧や呼吸などの全身状態が安定していたので、すぐに手術できたことも幸いしたとのことでした。クマに人が襲われ「命に別条はありません」と報道されても、実際は顔貌が大きく変わるほどに重大な怪我であることが少なくないし、傷が治った後も痛みが何年も続いている例も多いようです。昨年度、クマによる人身被害が最も多かったのが秋田県で、死者は出なかったものの、70人が負傷し、重症者20人が秋田大学医学部附属病院に搬送され、18人が顔を負傷、失明3人、顔面骨折は9人であったという。
 クマのパワーは強く骨は折れ、傷口は深く、筋肉までぱっくりと開く。また牙や爪による傷は破傷風などの危険もあり、表面的には小さい傷でも化膿して重篤な感染症を起こす危険性も高くなります。少しの傷だからと甘くみて医療機関受診を先送りしないようにしましょう。クマ外傷では受診治療も多岐にわたるため、各科の連携の下で行われます。特に秋田大学医学部附属病院では全国的にも多くの症例治療経験を持ち、治療、研究、学会発表等に加え書籍まで発刊するなどして予防にも力を入れております。クマ情報を活用し、熊の生息地には一人で行かない、音を出すなどしてクマに人の存在をわからせることが大切です。また市街地に来ている熊は人から攻撃を受けない、食べ物がある等を学習している可能性があります。ゴミ出しの管理、近場での野外活動時食べ物を置いてこない、家でも夜間の戸締り、窓を施錠するなど、徹底して対策をしていくことが大切に思います。クマ被害を防ぐためにも・・・。

(参考資料:中永士師明著「クマ外傷 クマージェンシー・メディシン」)


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